夏と顔と川


世にも珍しく、
好きな本について語りたいと思います。
批評でもレビューでもなく、
単なる発露として。

夏が近くなると、あるいはぽっかり空いた休みの前になると、
ふと恋しくなる本です。

以下の条件が当てはまる方は良ければ是非。
・散歩が好きな方
・結構バカバカしい理由で遊ぶのが好きな方
・スケジュール帳の空欄ににやっと出来る方
・一期一会で人と出会うのが好きな方
・夏休みが好きだった方

知ってる人には実はこの条件で特定できると思うのですが、
そんなことはまあいいとして。

それでは続きます。


何を置いても特筆しないといけないのは、
一切顔の外見についての描写が無い事です。
主人公は、「人間の顔」について認識できないという特性を持っています。

私がこの本に対して思い入れが大きいのの半分くらいは多分この設定のせいです。

主人公は
「目が二つ、鼻が一つ、口が一つあって、みんな同じ」
という認識にしかならなくて、
少なくとも描写上、
身長と着ているものの色、持ち物くらいしか出て来ません。

私が他人の顔を覚えるのが病的に苦手というのはあちこちで言っていますが、
感覚的にすごく近いのです。

彼は体臭や声で相手を見分けていて、
それがないと誰の区別もつかない状況です。
その代り、そっくりな双子を完璧に区別できます。

私は流石にそこまでではありませんが、
顔で区別できないというのはここ10年くらいでようやく克服したレベルで、
それでも人並み以下。
他人を認識するのに、
声と体の形(バランスや身長)、動き方、辺りで基本的に認識しています。
なので、中学の頃は地獄のようでした(皆似たような髪型、制服、日に日に変わる体型)。
高校が私服高だったのには、そういう背景がかなり大きいです。

話が逸れました。
さて、彼が色んな人と出会います。
歩きます。
歩きます。
また出会います。
歩きます。
歩きます。
時々休みます。
時々運ばれます。
出会ったり別れたりしながら、ただただ移動します。

突き詰めちゃうと、それだけの話です。
移動は井の頭公園を始点に、
ひたすらに海を目指して。
移動の方向性上、
中央線~西武池袋線の間に詳しかったりするとにやっとできます。

ただそこで出会った人たちが、
何となくくっついたり離れたり、
色んなことを話しながら動いていくだけの、
夏休みの話。

でもそのシンプルさと、
主人公に対する親近感と、
私も大好きな、暑い中道をてくてくと歩く感覚、
たまたま知り合った人が仲間になっちゃう感覚、
そういうのが物凄く好きで、
普段は忘れているんですが、
時折竜巻のように読みたい気持ちになる一冊です。

何か不当に評価が低いようなのでこうしておすすめしております、
「サマーバケーションEP」古川日出男でした。

古川日出男、大作よりこういうテイストの方が好きなんだよなぁ。
文体的にもちょっと児童文学っぽさがあって、
もっと広まればいいのに、と思うことしきりです。

それでは、
作中の一番好きな文章を掲げてご紹介を終えたいと思います。



【なにかがとても胸に刺さります。とても、とても。とても。】

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2017-07-01 : 日々雑記 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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